「仕事や宗教や配偶者は変えられても、贔屓のクラブは変えられない」
この“金言”は、ケン・ローチ監督の「エリックを探して」にもありましたが、こちらアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」にも、似たような台詞が出てきます。
アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作品というのは当たり外れがあるのだけれど、70年代のアルゼンチンが舞台の作品というので、「オフィシャル・ストーリー」みたいな感じかな?と割と期待して、サッカーネタもあるしスタジアムも出てくると聞いて大いに希望を持って観たこの作品。
アルゼンチン映画なので、男性も女性も、主役から脇役に至るまでみ~んなえらく濃い!こてこてです!顔が。
メキシコのサッカー映画「ルド and クルシ」でへんてこプロデューサーを怪演していた俳優さんがここでも脇役でいい味出しています。
が、ラテン=お気楽で明るく、異性のこととなると無我夢中というステレオタイプを見事に裏切ってくれますよ。
ハードボイルドと言ってよいほど抑えた情熱が通奏低音となり、今は退職した裁判所書記官(渋くていい感じ)が25年前に担当した忌まわしい事件が語られていきます。
アルゼンチンの司法制度では予審制度をとっているのかな?
判事補や書記官が刑事事件の捜査をしているんですね。
映画的演出として大目に見ますけど、主人公たち、どう考えてもそれ違法でしょ!みたいな手段をとりつつ、殺人事件の容疑者を割り出していきますが、その際に上記の“金言”が生きてくるわけです。
ここまで(サッカーネタが出てくるまで)結構長いです。
沢山出てくる選手名、私にはわかりませんでした(70年代後半のラシンのレギュラーすれすれの選手たちなのだろう)が、知らなくても勿論楽しめます。
しかし主人公の元書記官がちょっとでもサッカーのことを知っていたら、もっと展開が早かったのに。
主人公のような、アルゼンチンの“ちょっとしたインテリ”層は、すごいサッカー好きと、サッカーなんか大嫌い派とに分かれるといいますが、主人公の場合好きでも嫌いでもなく、単に関心がない人です。
行きがかり上スタジアムに通い詰めることになったら、「もう月に4回も来ている」とうんざりしている様子。
(まあ、仕事ですから、観戦に集中できるわけではありませんし。)
原作者のエドゥアルド・サチェリは、実際に裁判所職員だったことがあるそうで、日本語には訳されていませんが主にサッカーをテーマとする短篇で人気を得ている作家だということです。
が、映画においては見どころの一つとなるスタジアムのシーン、原作にはないそうです。
そして、その後もストーリーは二転三転してまだまだ先は長いです。
全体にダークで重たい作品ですが、見逃さないで良かった!!!
注:
いかにも濃厚なラテンラヴロマンス、ではありませんが、恋愛ものが絶対に受け付けない人(サッカーファンにはいるかも…)には向かないと思います。
が、サッカーファンなら観ておきたい1本です。
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