同じ日に、ガエル・ガルシア・ベルナルとディゴ・ルナが兄弟サッカー選手を演じる「ルドandクルシ」と、名匠クリント・イーストウッド監督作品「インビクタス 負けざる者たち」を観てきました。
私がラグビーよりサッカーが好きであり、南アフリカよりラテン・アメリカに親近感を持っている(根拠は特にない)せいもあるかと思いましたが、あのイーストウッドの、と期待していた「インビクタス」よりも、奇作怪作の類かと思っていた「ルドandクルシ」の方が、10倍くらいよかったです。
もちろん「インビクタス」も決して悪くはないのですが・・・でも予定調和的で、お子さま映画っていう印象です。
モーガン・フリーマンはマンデラにむちゃくちゃ似ていたし、マット・デイモンもいい味出しているのですが、何かが、かなり足りません。
マンデラ言うところの「復讐ではなく赦して和解する」という新しい国造りの基本理念。
そう言われても、政権をとった黒人側にも政権を追われた白人側にも、それに対して当然戸惑いや反発があるのだろうけれど、あ、そうですか、マンデラさんが言うならわかりましたって感じで、納得できるような描き方がされていませんでした。
ラグビーの南ア代表が、なぜ、どのように、ワールドカップ本大会まで強くなったのかもわかりませんでした。
(選手たち(一人のカラードを除いて全員白人)がどんな思いで南ア全体の代表と心得るのかもあまり丁寧に描いてはいない。)
最後の決勝戦では、マンデラが直々に両チームの選手たちに声を掛けるのですが、実話だとしたら、随分なホームアドバンテージを許したものだと思います。スポーツに政治介入があからさまにされているようで、気分のいいものではありませんでした。
アメリカ人にとってはこういうのもありなのか?
でもまあ、決勝戦は素直に感動して観ましょう・・・。
それが可能ならいい映画です、きっと。
「ルドandクルシ」は、<メキシコ=ラテン=てきとー>という図式を前面に出している配給会社の売り方にはやや疑問を覚えます。
コメディータッチながら、サッカーと人生をビタースイートに考えさせられる映画です。
ビタースイートなサッカー映画と言っても、ケン・ローチやキアロスタミとはまた一味も二味も違いますが。
ガエル扮する弟もディエゴ演じる兄も、サッカーの才能があるのに、あんまりサッカーに優先順位を置いておらず、徐々に道を逸れていってしまいます。
それも人生。
ガエルが劇中で歌う『甘い罠』は、スペイン語がわからない私には「ケ~ロ、ケ~ロ、ケ~ロ」と冗談のように聞こえます。
このダサさが結構お似合いです。
ディエゴの扮するキーパー、カッコいいです。
何かを守っている姿には、サッカーでも現実の場でも、感動せずにはいられない、からでしょうか。
でもこれがダメ男なんだ、実際は。
彼らのお母さんはヴァネッサ・ペロンセルさん顔負けの奔放な過去をお持ちで、お子さんたちは皆父親が違うようですが、ブラジル映画の「リーニャ・ヂ・パッシ」のサッカー大好き母さんもそんなだったからな。
珍しいことではないようです。
大観衆注目のPK対決の前に、不振まっただ中でこの1本に再起に賭けるキッカー(弟)と連続無失点記録のかかるキーパー(兄)がお話合いをしてしまうのは、いかにもありえない設定で、その点サッカーファンからクレームがついているようですが、そこだけは大目に見ないと。
メキシコ映画界の俊英たちがしっかりプロデュースして真面目に作っている映画です。
邦題をもう少し工夫してくれたら、と思うと残念です。
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