2008年カンヌ映画祭で最高賞を取った、ドキュメンタリー風の、でもドキュメンタリーではない映画。
「パリ20区、僕たちのクラス」
原作はあり、原作者の国語教師がそのまま主演しています。
フランスは多くの移民を受け入れている国だというのは周知のこと。
パリ20区はとりわけ移民労働者が多い地区で、映画の舞台となっている中学校の生徒も、多くが非ヨーロッパ系と思しき子たちです。
映画では、主人公のフランス語(国語)の先生の授業と、職員室での先生たちの様子、成績会議や懲罰委員会といった会議、それにほんの少しだけですが休憩時間にサッカーに興じる光景が描かれています。
2時間8分となかなかの上映時間、且つわくわくどきどきのスペクタクルな展開や仕掛けがあるわけでなし、上記の通りのドキュメンタリータッチのいたって真面目な映画ではあるのですが、全く退屈することなくラストのサッカーのシーンまでいってしまいます。
男の子は、アフリカ・ネイションズ・カップが話題になり、それぞれのルーツがかなり明らかになります。
「僕にとって最高のモロッコ代表が出場を決めました。」というナシム。
ナシムから「マリの出場がダメになったら、大会を無視する。」「大会前は騒いでいたのに、マリが出場できないからと急に冷めるのはヘンだ」と、ほぼ名指しで批判されるスレイマン。
(自分が応援しているところが出ないとなると「急に冷める」、そういうのってごく自然だと私は思いますけど、ナシムくん厳しいなあ!)
「マリが出ないから黒人が応援するチームがない?コートジボワールが出ます!」と、ナシムに反論するブバカール。
それだけなら可愛いんだけど・・・
「ドログバと比べたらモロッコは二流。イングランドで活躍するモロッコ選手は?ゼロです。」
と、他国を貶めるようなことを言ってはいけないよ、ブバカールくん。
こうやって盛り上がるアフリカ出身の生徒たちに対して、
「アフリカ・カップの話はうんざり」という転校生の大人びたカルル(シャルルではないみたい)。
カリブのアンティル諸島の出身で、アフリカサッカーには興味がないのか。
応援している国はフランス。
「アンティル諸島もフランス領。アンリもフランス代表だ」というのが彼の論理。
自己紹介では「好きなもの」の筆頭にサッカーを挙げていました。
「嫌いなもの」はマテラッツィ。
私の一押しのラバくんは「毎年故郷のアルジェに帰る」と自己紹介に書いています。
「ジダンが好き。あとマルセイユも!」
無論アルジェリア出身ですね。
あとのシェリフ、ビュラクはアラブ系と思われ、アフリカカップの話題に加わっていないところをみると、レバノンとか西アジア方面の出身かもしれません。
アガムはスレイマンやブバカールよりカルルに似ているような気がするので、やはりカリブ出身かも。
ウェイは中国人で、サッカーをやっているときにクラスメイトから「ジャッキー!」と呼びかけられます。
ヨーロッパ系と思しきは、オタク風のアルチュールと幼げなダミアンの2人だけ。
(残念ながらアフリカ・ネイションズ・カップはほぼノーチェックでしたので、モロッコがマリに4-0で勝って本大会出場を決めたのはいつのことかわかりませんでした。)
女の子の方は、ルーツがはっきりわかるような発言がありません。
スレイマンの事情に詳しいらしいクンバは同郷なのかも?
超生意気なエスメラルダは、何とも不思議な風貌をしているし。
しかし、先生たちはほぼ全員ヨーロッパ系で、ミヒャエル・バラックみたいな歴史の先生フリデリック(なかなかの熱血教師)は素敵です。
母国と祖国、国籍とルーツが錯綜する状況を理解するにはまだ相当の想像力が要求されるのですが、まあ、大概は普通に出身地を応援しているものなのだな、と。
アフリカ・ネイションズ・カップのことも含めて、学校では友人と他愛ないことを恐らく真剣に議論するものなんだな。
いや、今でも同僚とサッカー話をするときはそうなんだけど。
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