2017年2月15日水曜日

サッカー失恋

「君のせいで得点シーンが観られなかった」
…って、それ言ったら怒らせること間違いない。

昨日、川崎市市民ミュージアムでケン・ローチ監督「まなざしと微笑み」を観ていて、思わず声を上げそうになった場面です。

主人公の不器用さ、特にこのスタジアムでのデート場面で際立っていました。
80年代、慢性的不景気、失業問題を抱えたイギリス。
特に北部の鉄鋼の町シェフィールドは高校卒業した若者に就職先は殆どありません。
主人公はそんな手持無沙汰な毎日を送る若者です。
失業中ながら恋人ができ、その彼女が一緒にサッカーを観に行きたいと言い出し、「女の子がいると仲間と盛り上がれない」と乗り気ではなかった主人公でしたが・・・。
応援に熱が入ってきたところで、彼女の具合が悪くなり、「外に出る、帰りたい」という訴えに対して、彼女の体調を気遣うより試合の行方を気にしている(のがよくわかる)のがいけません。
もちろん、一緒にサッカーの試合を観たいと言い出したのは彼女の方でしたが。
そして、一旦廊下に出たところで歓声があがるので試合を観に、彼女を置いて座席に戻り、再び彼女の元に来て言ったのが冒頭の台詞。

結局彼女は家に帰ることになり、主人公は試合を気にしつつ「バス停まで送ろうか?」と発言(←家まで送れって!)、そのうえ出入口係に「すぐ戻るから」と言うなどこの上まだ彼女の体調よりサッカーを気にしている無神経さで、案の定「もう二度と会わない」と申し渡されてしまいます。
よくあるんだろうなあと思われるサッカー失恋の一幕でした。

あのね、彼女を連れて行った時点でその日は彼女優先にするという覚悟をしないと。
彼女にとっては最悪の観戦デビューとなり、もしかすると二度とサッカーなんて観に行かないという気持ちになってしまったかもしれません。

ネタバレしてしまうと、実はこのカップルはこういう後味の悪い別れ方をしていながら、一旦はよりをもどします。
が、さらに試練は待ち構えており、ラストでは彼女から将来についての選択を迫られることになります。
それは延々と求職活動しても就職できない主人公は、陸軍に入った親友にやや自慢めいた話を披露されて心が相当ぐらつきます。
(陸軍のリクルートは映画の冒頭にあり、親友はそれであっさり入隊しますが、鉄工所勤めで労組の活動家でもありそうな父親の猛反対で、主人公はその時点ではパスしますが、ここで再び動揺が走ります)。
そこで彼女は入隊するなら別れる、と申し渡します。
でも、当面失業状態は続きそうです、軍に入らない限りは。
しかも、歴史展開を知っている観客は、この後イギリスの福祉がより悪くなるのを知っているし。
さあ、どうする?

川崎市市民ミュージアムでの最後の最後の企画上映(来年度から民間委託されるためこれまでのような垂涎ものの企画上映がなくなる可能性大)インディペンデント映画特集、Part1《ケン・ローチ初期傑作集》は、随所にブリティッシュロックやサッカーのモチーフがちりばめられ、文字通り若きケン・ローチの才能あふれる作品を堪能できるものです。
最近のローチ作品の登場人物は、貧しくともしたたかに反撃するようになっていますが、初期作品では弱者はあくまで叩かれて落ちていくので、観ていてもう居たたまれなくなります。
日本では劇場公開されていない、TV用映画も含めた70~80年代の作品をフィルムで観られて感謝です。
映像ホール、いつもよりずっと混んでいました。

レンフィルム、戦後ポーランド映画、チェコアニメ、オリヴェイラ特集。
質の高いレアな作品の上映を最高の環境で提供してくれた川崎市市民ミュージアムに心から感謝を申し上げます。

ケン・ローチ自身の経験でもありそうな?サッカー絡みでの失恋教室と、軍隊リクルートの誘惑。
今よりもずっと苦みの強い作風が若々しい。

「まなざしと微笑み」

2016年10月30日日曜日

キアロスタミ遺作「Take Me Home」

キアロスタミ追悼特集にして


キアロスタミ遺作の「Take Me Home」
あー、とってもキアロスタミらしい掌編。
ちょっとわざとらしくてね。
登場するのは少年、猫3匹、犬、烏、鳥(鳩?)数羽、無限の階段、坂、サッカーボール。

ボールを持って、帰ってしまった。
さようなら、なんだなと涙する。
キアロスタミとサッカー。
「トラベラー」
「そして人生は続く」
そして 「Take Me Home」

また会えるよね?

「Take Me Home」
 

2016年8月5日金曜日

たぶん世界一簡単なサッカー映画解説

と書いたメモ書きが見つかった。
いつ書いたんだ?2012年くらいだったろうか。

その1 ドキュメンタリー
「線路と娼婦とサッカーボール」
「ガリンシャ」
「ジンガ」
「ジダン~神に愛された男」
「KING OF TOKYO O FILME」
「ペレを買った男」
「アザー・ファイナル」
「奇蹟のイレブン~1966年北朝鮮VSイタリア戦の真実」
(番外)「ワイルド・ワイルド・ビーチ」2006年ワールドカップヨーロッパ予選ロシア対ポルトガル戦

その2 試合は史実、ドラマ部分はフィクション
「オフサイド・ガールズ」2006年ワールドカップアジア予選イラン対バーレーン戦@アザディスタジアム
「ベルンの奇蹟」1954年ワールドカップ決勝ハンガリー対ドイツ
「ウィニング・チケット」スコアから鑑みるに1955年4月24日@ウィーンのオーストリア対ハンガリーの親善試合 もちろんプシュカシュが出演…しないよ。
「カップ・ファイナル」1990年ワールドカップ本大会のチケットを持ちながら行けなかったイスラエル兵(徴兵されちゃったんだね)とパレスティナのレジスタンス。ひいきのチームは一緒だった。
「ビューティフル・ピープル」1994年ワールドカップヨーロッパ予選オランダ対イングランド

その3 試合もドラマもフィクション
「少林サッカー」
 セリエAの選手たちが吹替えをしたイタリア語版があるそうで。
「明日へのチケット」ケン・ローチ編 CL準決勝ローマ対セルティック@ローマ
 ただ、これが日本公開されたとき、セルティックは本当にCLで快進撃したのだった。
「ワン・デイ・イン・ヨーロッパ」 CL決勝ガラタサライ対デポルティボ・ラ・コルーニャ@モスクワ
 実現したのはモスクワでの決勝というのだけか、今のところ。
 でも、仕事そっちのけで試合に夢中な警官はどこの都市にもいるってことで。
フィンランド「FCヴィーナス」→ドイツ「ヴィーナス11~彼女がサッカーを嫌いな理由」
オムニバス「それぞれのシネマ」のやはりケン・ローチ「ハッピー・エンド」
ウラジーミル・ダフノ「3人のコサック」シリーズ「コサックのサッカー」
 ソ連時代に作られた対仮想フランス・ドイツ・イングランドに加え、ユーロ2016に向けて対仮想スペイン・イタリア・チェコ・ベルギー・スウェーデン等々も新たに作られ…さすがに対ロシアはなかった模様。
ヤン・シュヴァイクマイエル「男のゲーム」
「幸せになるためのイタリア語講座」ユーヴェファンのフィン
「ホレム・パーデム」スパルタ・プラハファンのフーリガン
「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」
 ラストのボクシングの試合は史実
「ライフ・イズ・ミラクル」
「僕たちのキックオフ」
レバノン「ナイスシュート!」 超短編一発芸
スイス「モンディアリート」96年フランス大会中のロードムービー
ブラジル「リーニャ・ヂ・パッシ」
オムニバス「ストリート・オン・ヒューメン・ライツ」中の「The Final Match」
「栄光のフォワードNo.9~女子サッカーに捧げる」

その4 史実改変?
「勝利への脱出」
 1942年8月9日キエフでのいわゆる死の試合を下敷きにしているが、経過も結果も変えている。

(書きかけ)



2016年6月9日木曜日

«Выкрутасы» オデッサ・スタジオ: エターナル―奇蹟の出会い

          Сегодня я расскажу вам о современном русском фильме «Выкрутасы».  Вы смотрели этот фильм? Это романтическая комедия. Но это фильм о футболе. Сначала давайте посмотрим сюжет драмы.

 Действия проходят в Москве.  Главный герой – Слава, которого играет Константин Хабенский. Слава случайно встречает Надежду, в роли которой – Милла Йовович. Они влюбляются друг в друга, и договариваются жениться.




Слава работает учителем школы в маленьком городе Пальчики, на Юге России. Однако перед самой свадьбой местная детская футбольная команда приглашает его на пост тренера. Он хочет освободиться от работы и сразу же поехать в Москву к своей невесте. Поэтому ему не удобно, если команда будет выигрывать. Он специально подбирает неопытных детей. Но мальчики против его ожидания победили, победили, и ещё раз победили. Каждый раз, когда команда выигрывает, Слава звонит невесте в Москву и просит прощения.

Игроки клуба «Пальчики» - все уличные дети и применяют к футболу разные приёмы воров. Их игра похожа, например, на акробатические номера в китайском фильме «Убойный футбол(少林足球)», хотя за такие приёмы штрафуют. На мой взгляд, связь этих игроков намного крепче, чем у настоящей сборной России.

Дети не очень красивые, но симпатичные, и они напоминают футболистов сборной России, особенно, Александра Кокорина, Фёдора Смолова и Дениса Черышева.

Фильм был снят в 2011 году в России, и это дебютная полнометражная работа режиссёра Левана Габриадзе.

Габриадзе – актёр, который играл роль грузинского парня в популярном научно-фантастическом фильме «Кин-дза-дза!», а в этой картине играет одного гостя на свадьбе.

Героиню-Надеджу играет знаменитая голливудская артистка Милла Йовович. Она родом из Киева. Её отец Богдан сербский врач. Он родился в Югославии. А мать Гарина Логинова – русская актриса. В этом фильме она играет мать героини.

Комедия «Выкрутасы» – для Миллы Йовович первый и пока единственный русскоязычный фильм, в котором она снялась.

Теперь я расскажу о самом главном. На последнем эпизоде фильма появляется известный футболист Александр Кержаков в роли самого себя. В то время он был игроком петербургской команды «Зенит» и сборной России. А сейчас он играет в швейцарском клубе «Цюрих».

  Этот тридцатитрёхлетний страйкер занимает первое место в таблице российских бомбодиров.

  Далее, после титра «Конец фильма» есть собрание кадров, не вошедших в само содержание фильма. Это тоже стоит смотреть! Милла со слезами благодарит всех по-русски: «Спасибо за приглашение меня русский фильм!»

           К сожалению, в Японии считают, что русские фильмы мрачные, длинные и скучные. Но «Выкрутасы» лёгкий, весёлый и богатый юмором фильм! Я ждала появления такого русского фильма! Надеюсь, фильм вам понравится.


           Спасибо за внимание.

オデッサ・スタジオ: エターナル―奇蹟の出会い: ロシア少年たちの少林サッカー、「エターナル 奇蹟の出会い」 今までこのブログには、「ロシア」のラベルでは5作品載せている。 中継基地 "米ソ連合"時代のサンクチュアリ (日本未公開) 太陽に灼かれて ひまわり ワイルド・ワイルド・ビーチ (映画...

2016年2月15日月曜日

イタリア式サッカー狂騒曲

「イタリア式サッカー狂騒曲」
サルディーニャ島のアマチュアリーグのへぼクラブがアルゼンチン帰りの、ラモス瑠偉のような容貌の(=かなりぱっとしない)選手によって生まれ変わり突如連勝、優勝を争うようになる。しかしそこには…。
一方、一流審判のクルチャーニにはヨーロッパリーグ決勝のジャッジを任される話が降って沸くのだけれど、そこには罠が…。
と話が最後につながるわけだ。
審判(凄い美形とは思えず)のナルシスチックなところがもっと大胆に脚色されていたらよりばかばかしく笑えたのでは?アルゼンチン帰りの人、あれ何?!

上述した通り、アルゼンチン帰りのクラブの救世主選手はひょろっとした、且つラモス瑠偉のようなもしゃっとした人で、幼馴染のいかにもなグラマテス美女(ソフィア・ローレンみないな感じ)にアタックするが、絵に描いたようにツンデレなのでなかなか上手く運ばなかったりする。
あ、そうそう。
『図書館大戦争』でも感心した通り、世の中最強なのはおばあちゃまなのは、イタリアはサルディーニャでも同じだとわかる。
葬儀の最中でも号泣しながらでも我らがクラブの戦略的弱点を的確に指摘し、エースの我がままにもここぞという手を差し伸べ、いかがわしい審判には天罰を下す。
あっぱれなおばあちゃまが最高に可愛い。これが結論である!

 



オデッサ海岸通り: みなとみらい・ショートショートシアター: 今年のヨコハマ・フットボール映画祭は最後の1本のみ観戦することとなった。 ドキュメンタリー作品が多かった今年のラインナップの中で、異色?の新作ドラマ作品。 「イタリア式サッカー狂騒曲」 サルディーニャ島のアマチュアリーグのへぼクラブがアルゼンチン帰りの、ラモス瑠偉のような容...

2016年2月11日木曜日

「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」@ユーロスペース

オデッサ海岸通り: 皆にお勧め 「ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る」@ユーロスペース: ユーロスペースで「 ロイヤル・コンセルトヘボウ   オーケストラ が やって来る 」を観た。 ウルグアイ出身のファゴット奏者、肉親の粛清や自身の俘虜経験など過酷な過去を想うペテルブルグ在住のセルゲイさん、音楽に夢中の南アの少女ら、説明不要、ただ観て聴いて、充実した気分に浸れる...

ウルグアイ出身のファゴット奏者、肉親の粛清や自身の俘虜経験など過酷な過去を想うペテルブルグ在住のセルゲイ・ボグダノフさん、音楽に夢中の南アの少女ら、説明不要、ただ観て聴いて、充実した気分に浸れる映画だった。

これはサッカー映画ではなくて、オーケストラのワールドツァーのドキュメンタリーで、いわば音楽映画。
だけど、映画の前半で、ブエノスアイレス公演時、ウルグアイ出身のファゴット奏者ヌニェスさんとドイツ人フルート奏者ケルステンさんがレストランに入って食事しながらの会話場面。
壁に飾られたペナントの数々の中にペニャロールがあるのを観て「我がクラブのだ!」と喜ぶヌニェスさん。
「でも子どもたちはアシックスファンなんだ」というと、ケルステンさんは「うちのはバイエルンファンだよ、行ったこともない街なのにね」
と二人ともお父さんの顔。
サッカーが”グローバル”化したのがわかる一コマ。オーケストラもそうなんだけど。
ヌニェスさんはその後家族に電話(スカイプ?)して「メッシの生まれた国からだよ」と言っているから、サッカーファンとお見受けした。

2016年2月4日木曜日

バーバリアンズ セルビアの若きまなざし

やっと「バーバリアンズ セルビアの若きまなざし」を観た。

感想としては、「どこにもこういう映画ってあるんだな」という、既視感ありの、その意味ではやや期待外れってところ。
それでもセルビアっぽくはあったが。
(クストリッツァとかの、ハイテンションなパワーはない。もっともクストリッツァのあれはセルビアと言うより、ロマだったりボスニア方面だったりするのだろうか?)
しかし、だからこそ観ておくべき映画だと思う。
それも今観ておくべき映画。
是非見ましょう。

結局そこに帰っていくしかない地元サッカークラブのサポーター、と言っても、自分の応援するチームの選手を傷つけたりして、主人公の言動は一貫せず無軌道。
(ここが予想と違ったところ。熱狂的ファンが主人公かと思っていたので。)

こういう映画はよくある、と書いたのは初期ボドロフ「自由はパラダイス」「モスクワ 天使のいない夜」、カネフスキーやラバノフといった90年代ロシアの一連の作品、フドイナザーロフ「少年、機関車に乗る」あたりもそうだし、最近ではウクライナの「ザ・トライブ」なども挙げられるが、ああいうタイプの鬱屈した青春迷路系(スキンヘッドなんて恐らく当地でも10年遅れであろうが)の作品は割と観てきたから。
旧東欧の作品を挙げたけれど、ケン・ローチなんかもそうです。

何よりチェコの「ホレム・パーデム」に出てくるスパルタ・プラハファンの若者(飼い猫をポボルスキーと名付けていた)が思い出された。

ただ、バーバリアンズのルカくんは、サッカー自体にはそれほど情熱を持っていないように思えた。自分ではサッカー全然していなかったし。
選手になってサッカーで身を立てたいなんて夢は端から持っていない。
希望が見えない。
最初からない。
そういう時代、そういう風潮の、現代セルビアの若者を、恐らくかなりリアルに映しとっているのだろう。

とにかく、ルカも友人も、年齢の割に(高校生くらいだと思われる)非常に幼げに見える。

サポーターのグループが、予想とはかなり違った。
選手を傷つけられたりしたら、それこそ許しがたいことだと制裁でも加えるのかと思ったら、案外緩いし…。

昨今のセルビア代表の弱体化が何となく納得できるような、そういう空気が流れている映画だった。
夜明けはまだ遠い。
が、2018年のワールドカップには出場して欲しいなあ。