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2012年1月9日月曜日

TESE

東アジアのサッカーには極めて疎い私は、このドキュメンタリー映画の主人公である、鄭大世(チョン・テセ)という選手のことは知りませんでした。
なんか名前は聞いたことがあるな、程度。

彼は日本で生まれ育った在日三世のコリアン。
韓国籍。
映画には一切出てこない父親は韓国籍で、おそらくほぼ日本に同化していて、彼にも日本の教育を受けさせたいと願っていたとのこと。
しかし、彼の母方は朝鮮籍で、母親は「きちんとした“民族教育”を」と強く願い、父親とは大喧嘩した末、強引に朝鮮学校に入れる。
彼は学生時代から際立って優秀なサッカー選手だったらしく(家庭用八ミリフィルムなどかなり幼い頃からの映像が残っているのだ)、Jリーグは川崎フロンターレで活躍し、現在はボーフム(ドイツ)でプレイ。

この“民族教育”がどういうものか、私は知らなかったし、実のところあまり関心も持っていなかったのです。
むむむ。これは…。
民族教育というより個人崇拝強要のようなんですが。
戦前日本の“御真影”崇拝の図にやたら似ているような。
ソ連・ロシア映画でスターリンの大肖像画なんぞが出てくると、そこは笑う場面です、という癖がついていたのですが、どうもそこでくすりとしてはいけなかったみたい。
彼のお母様の推奨する“民族教育”は、かくも強烈な印象を与えました。
ただ、そういう教育が行われていたとしても、人間というものは、教育する側の思い通りの人間に全員が育つことは絶対にないわけです。
彼にしても、おそらくお母様が望むとおりのがちがちの国家主義者には育っていないようです。

彼の国籍は韓国であり、日本で生まれ育ちJリーグで活躍していたことで日本への国籍変更することも不可能ではなかったので、韓国代表にも日本代表にもなれた(実力的にはクリアできていたようです)はずですが、鄭大世(チョン・テセ)選手、幾多の困難が控えていることを承知の上で代表は母の祖国である北朝鮮を選択します。

このあたりまでは、例えばフロンターレファンの人など、普段からJリーグを観ている人には周知のことだったでしょう。

北朝鮮代表にはなったものの、現地育ちの選手たちとすっきり打ち解けることはありません。
背負っているものがそれぞれ違います。

同室は日本育ち北朝鮮籍のアン・ヨンハ(安英学)選手。
この人のことも名前しか知らなかったのですが、素晴らしく美しい選手ですね。
この選手は物静かに隣にいただけなので、多くを語りませんでしたが、鄭大世選手とはまた似て非なるバックボーンを背負っているはずで、この人の言葉も聞きたいと、欲張りながら考えました。

さんざん悩み、壁にぶち当たり、それでも前に進んでいる様子が、ナレーションもなく淡々とした映像で語られています。
北朝鮮代表のロッカールームやバスの中など割と秘蔵映像が多いです。

TESE:姜成明監督2011年日本
公式サイト:http://chongtese.net/

★この作品はYFFF2012ヨコハマ・フットボール映画祭(2/24-26 黄金町・ジャック&ベティ)で上映されるそうです。

2010年10月3日日曜日

「アイ・コンタクト もう一つのなでしこジャパン」

先日、誠に惜しくも、PK戦で敗れての準優勝だった、U17女子。
大、大、大健闘でした!

木村元彦『蹴る群れ』をちょこっと読んだくらいですが、女子サッカーって、タフですね。
彼女らのサッカーをすること自体への執念の凄まじさに触れてしまうと、男子の方の日本代表は、(普通にワールドカップ本大会にも出場するようになったものの)<恵まれすぎて温い>という通り一遍の印象を持ってしまいます。
(彼らだって絶対ものすごく努力しているに決まっているけど。)

知的障がい者サッカー日本代表のドキュメンタリー映画「プライドinブルー」の監督中村和彦さんが、デフリンピック(ろう者のオリンピック)に初参戦した日本女子代表を撮った作品(大会は2009年9月に台北で行われた)「アイ・コンタクト もう一つのなでしこジャパン ろう者女子サッカー」は、ポレポレ東中野で上映中ですが、10/8(金)までだというので、急ぎ観てきました。

ポレポレのある地下一階への階段では、なでしこたちのミニ写真展。


日曜の昼間ですが、そんなに混んではいませんでした。
観客の中にはろう者の方もかなりいらっしゃるようです。
ロビーでは文字での案内もありました。
上映終了後には中村和彦監督のご挨拶がありました。
且つサイン会も。
(私もいただきました。)
映画はきわめてまじめな、というかまともなドキュメンタリーでした。
正攻法です。

前半はサッカーの場面は殆どなく、ろうであること、また手話について語られます。
学校教育で、口話が奨励され、手話については(口話が進まないということで)禁じられさえしたのだ、ということが強調されているようです。
確かに手話に「頼らない」人の方が、「健常者」にとって聴きとりやすい話し方をするようではあり、口話法奨励は「障がい者」をいかに「健常者」に近づけるかというものであるようにも思えました。

全員か、殆どの人は生まれたときからのろうであるようだが、障がいの程度、受けてきた学校教育、現在の職場等はそれぞれ。
彼女たちがどのようにしてサッカーと出会い、普段どのようにしてサッカーと関わっているのかは、もっと丁寧に描いてほしかったです。
きっかけを話してくれた二人の選手は、小学生の時にサッカーを始め、中断はあれどフットサルやサッカーのチームでプレイを続けているという、サッカーのキャリアの長い部類に入るのだけど、
「日本代表ってすごく夢のある言葉、レベル高いんじゃないかって思っていたけど、参加してみると、あれ?初心者多いなって」
という発言にあるように、多くはサッカーを続けてきた人ではないようだ。
何せデフリンピック初参加の、初日本代表なのだ。
その初心者たちはどのようにしてサッカーと出会い、彼女たちにとってサッカーはどういう位置づけになるのだろうか?と。
さて、練習の風景は殆どないままに、いきなりデフリンピック開幕。
実際、練習試合とかあんまり組めなかったということだろうか。
う~~~~む。
守備がね~~~、厳しいなあ。
DF同士、DFとGKとの連携が…。
しばしばゴール前ががら空きになってしまう。
「声をかける」というコミュニケーション手段が断たれているということはやはり相当厳しい。
そこはこうやってよ、と伝えるのにどうしたらいいのよ!
皆前しか向いていないじゃないの?!
と訴えるGK。
顔を上げ、周りを見る。
見ることでのコミュニケーションをより心がけなければならない。
それはわかっているが…。

最終戦。
音が消される。
良いアイデアなと思います。
ただ…字幕がちょっとセンチメンタルにすぎたと感じました。
監督さん、サッカーが好きだし、彼女たちへの思いれが凄く入っていて、エモーショナルになっているのですよ。
いや、観客だってそうなっているところなので、字幕で盛り上げなくてもいいのです。
いや、却って水を差してしまいます。

試合ごとに成長が著しい。
ちゃんと練習試合ができていたら、凄く強くなるんじゃないか?!
(正直、ホームレスワールドカップの「野武士ジャパン」の面々より見込みありそうに思った。)
4年後が楽しみ。

「アイ・コンタクト もう一つのなでしこジャパン ろう者女子サッカー」
中村和彦監督2010年日本