実はロシアはビーチサッカーが強かった。
(ビーチサッカーって、いったいどこでトレーニングしているの?)
今回の大会では決勝でブラジルを12-8で破り見事優勝しました。
記事はこちら(動画つき)
おかげで私もしばらく更新していなかったこのサッカー映画レビュー、ひさびさに書く気になりました。
ロシア人がいなければビーチサッカーにはならない?
モンディアリート
2000年の東京国際映画祭で観たスイス映画(フランス・スイスの共同制作)。
1998年フランス大会を背景に、アラブ系の青年ジョルジュと彼の天敵のような少年アブトゥが始めるマルセイユへのロードムービー。
小憎たらしいアブトゥはアラブ系ながらブラジルサッカーのファン。
なお、上映後の質疑応答で
「フランス開催、しかもフランスが優勝したワールドカップを下敷きにしながら、なぜアブトゥをフランスのファンにしなかったのか?それこそジダンとかの…」
という質問に対し、監督曰く
「1999年製作の作品ですが、実際に企画して作り出したのはそれより前のことで、はっきり言ってフランスのサッカーが強いってことを知らなかったんです」
とまあ、この辺から良い意味でも悪い意味でも製作者のいい加減さが垣間見えているかもしれません。
そして、短気でうだつのあがらぬ若者のジョルジュにはサッカーがらみのとある過去があったのでした。
けど、その“過去”は、うーむ、それはないだろう、いくらご都合主義映画の設定でもあり得ないだろう、あまりに安易な思い付きだろう、と言わずにはいられない不自然なそれなのだが。
この二人と同行することになるのは、かなり魅力的なお姉さんルイザと何でも屋のロシア人オレーグ。
この映画はこの二人で救われている、と言って過言ではありません。
アントン・クズネツォフ演じるオレーグは、ジョルジュとアブトゥにさんざん迷惑を被りながら結局は手助けしてくれるお人好し。しかも結構器用だ(何でも屋だから)。
無駄に短気で現状に文句ばかりで無能の主役二人は、オレーグがいなきゃどうにもならない。
ところで、タイトルのモンディアリートは、ビーチサッカー大会のことか、それが開催されている地名のことらしく、「モンディアリート 優勝賞品はマルセイユ(ワールドカップの試合が行われる)への招待券」という看板が彼らの道行くすがらわざとらしく出てくるのです。
それを見て、単純にすっかりその気になる二人。
しかしチームは3人、あと一人は?
で、予想通り都合よく、オレーグ再登場とあいなるわけ。
そしてこれも予想通りだけれど、試合をやっても少年はあんまり役に立たないし、テクニックには自信があるジョルジュも性格に難ありで、唯一まともなオレーグが孤軍奮闘するはめになるのです。
私がこれを鑑賞したのは上記の通り2000年秋のことで、当時はモストヴォイ&カルピンの全盛期ということもあり、「これもギャグか?こんな冷静なロシア人サッカー選手が現実には存在するか?!」と苦笑しつつ観ておりましたよ。
全編サッカー、ワールドカップがキーワードとなっていて、ビーチサッカーの場面もある(クズネツォフさん大活躍)けれど、サッカー映画としては微妙です。
アラブ系の主人公たちの状況は、当時南仏で移民排除の極右勢力が伸びてきた頃だということを踏まえて観るべきでしょう。
でもその描き方は不十分で、すっきりしない。
ラストあたりに出てくるジョルジュの家族は、実際にジョルジュ役のムーサ・マースクリ(脚本も担当)の家族だそうで、監督のニコラ・ヴァディモフともども仲間内で作った映画だという感覚が拭いきれない。
名作とは言えまいが、気楽に観るにはまあまあの一本か(←オレーグさんゆえに大甘評価)。
映画祭上映の後は案の定日本では一般公開はされず、VHSやDVDなどの発売もされていませんが、なぜかNHK教育「シネマ・フロンティア」で2001年に放映されたため、ご覧になった方も多少はいらっしゃるでしょう。
私も録画したので、VHSテープのまま家のどこかにあるはずなのです。
何でも屋オレーグを演じたアントン・クズネトォフさんはこのお方でありましょう。
「モンディアリート」という作品に出演したとは明記してありませんが、90年代からフランスでも活動しているとありますし、こういうお顔だったと思います。
モンディアリート
Mondialito
フランス・スイス (1999年 100分)
監督:ニコラ・ヴァディモフ
キャスト:ムサ・マースクリ/エマ・ドゥ・コーヌ/アントワーヌ・モリーニ/アントン・クズネツォフ/ カルロ・ブラント / エリック・ベレンジェ / ジャン・マリー・コルニユ / サッシャ・ザンコ
2000年東京国際映画祭コンペティション参加作品
(ムサ・マースクリは優秀主演男優賞を受賞)
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