この発言は某日本人解説者のオリジナルではなかったのか!
「テヘラン、25時」中、集合住宅の一室でTV観戦している男性(監督自身なのか?声だけで姿は見せない)が、その試合のロスタイムが6分経過したところで呻くように発した言葉だ。
それは1997年11月29日土曜日、1998年ワールドカップ(フランス大会)出場をかけての大陸間プレイオフ対オーストラリア戦でのことだ。
(結局この試合のロスタイムは8分余りにもなった)
イランはこれに先立つプレイオフ第1戦(ホーム)では1-1で引き分けてしまい、この試合は2点先攻されて絶体絶命に・・・。
ここからの試合経過についてはこちらの動画(コメントが入っていて観辛いのですが)をご覧になっていただくとして(註:大変ドラマチックで感動的です、イランサイドで観ると)省略する。
僅か10分ほどで、イランはバゲリとアジジのゴールで追いつく。
これでアウェイゴールルールにより(この予選からの適用だった)、このまま試合が終わればイランが本大会出場を勝ち取ることになるのですが、「早く終われ~!」と願うも、これが長い、長い、長い…。
「ふざけたロスタイムだ!」
(この試合が行われたのは目安に時間表示がされるようになる前なのだった。)
ゴールネットが外れるというアクシデントがあったので、長いだろうとは考えられただろうけれど。
この映画の字幕を担当したのはショーレ・ゴルパリアンさんであり、ペルシャ語で実際にどう言ったのかは確認していないが、そんなに原語から離れた日本語訳はしていないだろうと思う。
(彼女は特にサッカーが好きでも詳しくもないけれど、日本で上映されるイランやアフガニスタンの映画の翻訳をほぼ一手に引き受けており、当然サッカー映画の数々も手掛けている。)
15年前、チーム・メッリファンのこの悲鳴を記録していたドキュメンタリーフィルムは、続いてテヘランの町に繰り出し、歓喜に沸く人々の様子をただただ映し出す。
改めて驚いたのは、犬を飼っている人が堂々と出ていたこと。
この年の8月にハータミーが大統領に就任し、「テヘランの春」が始まりつつあった、ということも思い出す。
「オフサイド・ガールズ」の終盤、2006年ワールドカップ(ドイツ大会)出場を決め、祝賀ムード一色の町の実写も、このドキュメンタリーと何ら変わることはないが、このときはハータミーの第2期末期であった、ということも思い起こされる。
バゲリ、ダエイ、アジジ、マハダヴィキアが輝いていた。
フェリデーン、君はどこへ行ったの?
いずれにせよ、本大会出場決定でこれだけ皆で無条件に祝えるっていいなあ。
何度観てもいい。
幸せになれる。
ただ、選手らを見ても、ルール上からも、時代設定からも、これがもう過去の話だと思い知らされるのが、おもろうてやがてかなしきの心境になってしまうゆえんだ。
(現在のイランでは、本来こんなにもサッカー好きなはずの彼らが「サッカーどころではない」状況になってしまっているのが、傍から見ていて辛い、とても悲しい。)
「テヘラン、25時」“Tehran: Sa'at-e Bist-o Panj ”
セイフラー・サマディアン監督イラン2009年