マンチェスター・ユナイテッドが経験した未曽有の悲劇、1958年2月6日にミュンヘンの空港で起こった飛行機事故のことを私はこの映画の宣伝まで殆ど知らなかった。
だから、観ていて脳裏に浮かぶのは記憶に新しい昨年9月7日に起きたアイスホッケーチーム、ロコモチフ・ヤロスラーヴリのチャーター機の離陸失敗の事故だった。
特に事故当日ではなく数日後に亡くなった「天才プレイヤー」に関しては、ヤロスラーヴリでも救助された後に病院で亡くなった選手がいらした、と映画を観ていて本当につらかった。
幾つもの棺が置かれた会場を二人の警備員が守っているのに、この映画の主人公ジミー・マーフィー氏が感銘を受ける場所でも、やはりヤロスラーヴリの事故の追悼会場にあまりにも多くの棺が並べられ、薔薇が捧げられている写真に、心が痛んだことを、嫌でも思い出した。
(この記事など参照)
いずれにせよ、20代・30代のごく若い死は辛い。
事故が起こることが分かっていて観ているのは。
マンチェスター・ユナイテッド(以下マンチェスターという。シティーを忘れたわけではないが)が世界有数の強豪であることは知っている。
但し、普段イングランドのプレミアリーグを観ていない私にとっては(パヴリュチェンコらが移籍した当初は観ようと試みたけれど、ロシアリーグの試合を観た後とても身が持たなかった。つまり殆ど起きていられなかった。眠ってしまった)彼らがどんなに強いかの実感はあまりしていない。
カリャカがベンフィカに在籍した頃、CLでベンフィカとマンチェスターは同組で、私は根拠なくベンフィカはマンチェスターに勝てると確信していた。
(カリャカが活躍したわけでもないのだが、そのシーズンのベンフィカはやたら強くて、グループリーグを突破したのに対し、そのシーズンのマンチェスターは滅法弱くて、グループリーグ最下位だったのだ。)
事故があった当時の1958年、マンチェスターはやはり強いクラブで、地元の人たちに愛されるスター選手たちを擁していた。
おそらく外国人選手はおらず、全員連合王国の選手たちだ。
この映画の主人公も、マンチェスターのアシスタントコーチをしつつ、ウェールズ代表監督をしていて、まさにウェールズ代表の仕事があったおかげでこの航空機事故時にチームに帯同せず、事故には遭わなかった。
この人と、ボビー・チャールトンという若いFWが悲劇を乗り越えてクラブを再生する話、なのだが、事故後の再生部分は意外とあっさりことが進む。
試合の場面は案外少ない。
なので«サッカー映画»という雰囲気はさほど強烈ではない。
そのかわり、オールドトラフォードの外観が何度も映し出される。
事故前のクラブの和気あいあい、仲間は最高だぜっていう雰囲気を丁寧に描き、事故の様子や事故後の再生の苦労はセンセーショナルでも感傷的でもなく。
じんわりくる映画だ。
さすがイングランド映画。
日本でも人気クラブの映画だから、しかもサービスデーだから混んでいるかと思いきや、シアターNはがらがらだった。
シアターNって、ホラー映画かサッカー映画に特化したミニシアターなのだろうか?
(ホラーには縁がないが、サッカー映画は「線路と娼婦とサッカーボール」「マラドーナ」などを観に行った。)
ユナイテッド ミュンヘンの悲劇
ジミー・マーフィーさんは監督と1歳しか違わなかったんですね。
とても若く見えた。
2013年1月13日追記:ヨコハマ・フットボール映画祭2013で上映される。